先週参加した呼吸器学会九州地方会で見つけた雑誌、肺がん薬物両方Q&A 臨床現場での考え方

肺がん薬物療法における標準的治療から,ガイドライン通りにならないケースの対処法と考えかたまでを第一線の医師がQ&A形式でわかりやすく解説.化学療法における疑問,分子標的治療薬の使い方,合併症がある場合の治療の実際,副作用対策などについて,臨床現場で実際に困る内容が満載されていて現場ですぐに役立つ頼りになる一冊.

とHPにかかれていますが、実際臨床現場で悩むことを一問一答形式で取り上げ解説しています。Evidence basedなのかExperience basedなのかも記載されていて自分にとってはかゆいところに手の届く内容です。

ということでちょうど投与開始の予定があるEGFR-TKI (Gefitinib, Erlotinib) についての覚え書き。

【イレッサとタルセバの違いなど】

  • イレッサとタルセバの最大の違い用量の違い(イレッサは低用量でタルセバは高用量)。イレッサのMTDは700mg/day(実際使用量は250mg/day)だがタルセバのMTD=実際使用量=150mg/dayでありタルセバの方が量が多いと言うことになる。
  • そのためタルセバでは用量依存性の毒性(皮疹、食思不振、疲労や無力感)の頻度や程度が増える傾向となる。一方急性肺障害・間質性肺炎は容量非依存性に生じるためイレッサもタルセバも同程度と考えられる。
  • 抗腫瘍効果は容量の多いタルセバもイレッサも同程度、すなわちイレッサやタルセバの効果は、少なくとも臨床的に使用される量においては用量依存的ではない=用量を増やしても効果はあまり変わらない。(基礎実験ではEGFR遺伝子変異陽性の腫瘍には低容量でも劇的な効果がみられるが遺伝子変異陰性の場合にはMTDでも抗腫瘍効果が乏しいという結果がある)各種臨床試験の結果もある。
  • EGFR-TKIについてはどのタイミングで使うかが問題となってくる。

【下痢や肝障害】

  • NCI-CTC grade2までは治療可能で対処療法。Grade3では治療休止。再開時には減量投与も検討。Grade4や減量でもGrade3となる場合は中止。
  • 下痢に対しては腸管安静・整腸剤や止痢薬などによる対処療法。イレッサの臨床試験では下痢症状が発現すれば排便後ごとのロペラミド投与でおおよそコントロール可能とされた。下痢が起こればすぐに薬物による対処可能としておく。
  • 肝機能障害はタルセバで31%、イレッサで21.6%の出現(第2層試験結果)。発現時期は28日以降の報告が多く長期継続後に発現することもあり、投与継続中には1-2ヶ月に1回の肝機能検査実施が必要。イレッサでは体表面積1.5㎡以下の症例では肝機能障害の頻度が高くより重篤な傾向があるとの報告有り。休止後に通常投与量で再開しても悪化しない症例もあり肝障害を認めても減量を要しないことも多い。
  • 副作用時の休止は14日程度を限界に休薬しても効果が持続することが期待。
  • イレッサは半減期が長く、抗腫瘍効果が用量依存性ではないこと、第1相試験で50mg/dayから臨床効果が認められることから隔日投与でも効果が得られる可能性が示唆される。

【検査とそのタイミング】

  • 急性肺障害・間質性肺炎はその約半数が治療開始後1ヶ月以内に発生。
  • 頻度の多い有害事象は発疹・皮膚乾燥・爪囲炎、下痢、肝障害。これらは休薬で通常軽快。やはり肺炎には要注意。通常骨髄抑制は来さない。

【EGFR-TKIをやめるタイミング】

  • 効果が認められなくなったとき=PDとなったとき。ただPDをすぐやめるかしばらく続けるかには一部議論が残る。
  • EGFR-TKI耐性獲得遺伝子異常としてEGFR-TKIが結合するEGFRチロシンキナーゼ部位のT790M変異(結合できなくなる)が約半数にみられる。MET遺伝子増幅による異常(増殖シグナルがMETを介するようになるためEGFRを抑制しても増殖シグナルを押さえることができなくなる)は約20%

これらの薬剤を投与するかどうかはEGFR遺伝子変異があるかどうかで大きく変わってきます。そのためその検査を施行できるか、その結果は信頼に足るものなのかをどう判断するかが今後問題となってくると思います。

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